【東洋医学のしくみ】5章 鍼灸と気功の世界 >
気功師①
【きこうし】
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鍼灸師とは針を持った気功師
◆ツボにただ針を刺しても効かない
東洋医学の知識のない人が、針を上手に刺す技術とツボの位置、そしてそのツボがどういう症状に効くかを、ハウツー的に教えてもらったとします。覚えが早くて手先がある程度器用なら、外見上は鍼灸の専門家と同じようなことができるでしょう。しかし、これだけで病気を治すことができるかといえば、疑問符がつきます。
仮に何でもかんでも針を刺せば効くというのであれば、現代医学と東洋医学の治療を分ける必要はなく、現代医学の解剖学をもとに針を使えばいいはずです。ところが、物理的な技術と知識だけでは針の効能を100%引き出すことはできません。
漢方薬の場合と同じように、鍼灸の針はただの道具にすぎません。東洋医学の生理観と病理観に基づいた治療でなければ、意味をなさないのです。
◆針は気を送るための道具
針治療の最大の眼目は、経絡を流れている気に働きかけ、気を通じて効果を発揮させることにあります。
気に働きかけるのは、治療する鍼灸師です。鍼灸師が何を使って気に働きかけるのかというと、針そのものではありません。針は金属ですから、目に見えない気を刺すことはできません。鍼灸師は自分自身の気を使って患者の邪気にアプローチするのです。その媒介として針を使っているということになります。
疼痛(ずきずきとうずく痛み)があるときに、これを現代医学的な観点から針治療しようとする人は、疼痛を起こしている神経の付近に針を打って筋肉の緊張をほぐそうとしたりします。しかし、これだと解剖学的意識によるものですから、気を使っていることにはなりません。
東洋医学的な病理のメカニズムに基づいて治療するのなら、「このツボを使って経絡をこう流し、ここの部分の気を補おう」とか「この経絡を使って、この部分からこういう邪気を取り除こう」というようなイメージが必要です。気の意識がないと、いくら針を刺しても鍼灸師の気は患者に伝わっていきません。
◆鍼灸師と気功師
自分の気を患者に送り、経絡中を誘導して治療したい部分の気血や病邪に働きかけるのが鍼灸師であり、あくまでも使うのは「気」という点から、鍼灸師は「針を持った気功師だ」ということもできます。
このたとえを気功師に応用すると、気功師とは「針という直接的な媒介物を持たずに、気を遠隔操作する鍼灸師だ」と考えてもいいでしょう。
最近の気功師の中には、現代医学の診断結果を聞いて、肝臓が悪いといえば肝臓の部位に手を当てて気功だとするような人もいるようですが、鍼灸と同様に東洋医学の診断に合わせてイメージした方が、効果は大きいと思います。
![]() | 日本実業出版社 (著:関口善太) 「東洋医学のしくみ」 JLogosID : 5030095 |