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東洋医学のしくみ4章 漢方薬の世界 >

漢方薬と健康茶の違い
【かんぽうやくとけんこうちゃのちがい】

漢方薬の7割が煎じ薬
 八味地黄丸、小柴胡湯、加味逍遥散、温清飲、一貫煎、天王補心丹、咳血方――、これらはすべて漢方薬の方剤(薬草を組み合わせた処方)の名前で、それぞれの最後の文字はその薬の形態を表しています。

・○○丸、○○丹=丸薬
・○○散=粉末
・○○湯、○○煎、○○飲、○○方=煎じ薬

 東洋医学で処方される薬は、「○○湯」という処方が圧倒的に多くなります。漢方薬の7割近くは煎じて飲む薬なのです。
 湯に溶けだしたエキスを飲むということでは、茶も煎じ薬も同じです。以前は、茶といえば緑茶と紅茶ぐらいしかありませんでしたが、最近は中国茶やハーブティーなどいろいろな種類が増えてきました。これらの茶の中には、健康を標榜しているものも多く、とくに漢字名の茶は、はたして健康茶なのか漢方薬なのか、一般には判別できないような状態になっています。

漢方薬を他人にあげてはダメ
 漢方薬どうかは、「治療薬なのか、そうでないか」がキーポイントになります。つまり、漢方薬とは治療薬であり、そのためには、処方の前にまず診断が行われなければなりません。
 これに対して、健康茶は診断を必要としない、予防と養生のための飲み物です。漢方の専門家も健康茶を利用しますが、きちんと診断したうえで漢方薬を処方し、症状がほとんど消えてよくなった時点で、再発の予防と養生を目的に健康茶を出すという使い方になります。
 治療薬ということは、診断が違う(証が違う)ほかの人には、その漢方薬は使えないことを意味しています。健康茶なら適応する症状に幅があるので、違った症状の人が飲んでも害になることはまずありません。
 しかし、漢方薬は処方された本人以外が飲むと体を害する可能性があります。きちんとした診断に基づいて処方された薬であればあるほど、その傾向は強いといえます。「余ったから誰かにあげる」などということは厳禁です。東洋医学の治療では、それほどまでに特定された薬草の使い方をしているのです。

◆健康茶でも飲用には注意する
 東洋医学にはバランスという言い方があり、たとえば陰虚や陽虚のように、体が陰陽の一方に偏ってしまったときは、そのバランスをとるために、逆方向へ戻すための薬を大量に使います。もし、バランスの崩れていない人がその薬を飲んでしまったら、今度は逆側へ大きくバランスを崩すということになります。そのため、他人には使えないのです。
 診断を伴わない健康茶なら、飲んでバランスを崩すことは、本来起こらないはずです。ところが、最近は漢方薬専門家から見て、長期間飲んでも本当に大丈夫なのかと危惧するようなものまで健康茶として売り出すようなことがあります。
 病気でもない人がバランスを崩すおそれがあり、偏りが強く出る薬草は健康茶とすべきではないのですが、法律に違反してさえいなければ商売が優先するのです。
 病気の予防や養生のために健康茶を飲む場合でも、きちんとした知識を持つ専門家アドバイスを受けた方がいい時代といえるでしょう




日本実業出版社 (著:関口善太)
「東洋医学のしくみ」
JLogosID : 5030083


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出版社:日本実業出版社[link]
編集:関口善太
価格:1,620
収録数:115
サイズ:20.8x14.8x1.6cm(A5判)
発売日:2003年7月
ISBN:978-4534036179

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