チック
【ちっく】
Tic
チックは小児期ではまれな疾患ではありません。しかも多くのチックは成人するに伴い自然に治癒する傾向があります。チックとは突発的、急速、反復性、非律動的、常同的な運動あるいは発声で、発症が18歳未満で4週間以上持続するものをいいます。チックについては、かつては精神分析の視点からの解釈が盛んに行われ、対人関係や親子関係における心理的葛藤が問題視されて、心理療法や精神療法が治療の主体であった時期がありました。しかし、重症のチックを発症する家系(トゥーレット症候群)があることが知られるようになったことなどから、最近ではむしろ脳の機能的障害として遺伝的側面も検討されるようになり、とくに脳内ドーパミン受容体との関連が注目されています。しかしながら、チックは本人が止めようとするとかえって増強したり、ピアノの発表会などの緊張場面で強まることがあるのは確かで、チックは心理状態に影響されやすい疾患でもあります。またチックを発症する小児の母親が神経質で過干渉という印象を与えることも少なくありません。これらのことから、現在ではチックを発症する小児とその親(とくに母親)との間には、遺伝上の気質的な共通性があるのではないかと考えられています。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035292 |