ブルガダ症候群
【ぶるがだしょうこうぐん】
Brugada syndrome
突然に「心臓けいれん」ともいえる致死的な不整脈である心室細動(しんしつさいどう:心臓が細かくふるえ、ポンプ機能としてはゼロの状態)をきたし、失神を起こしたり、時に突然死にもつながると考えられている原因不明の心臓病です。普段は軽度の心電図異常しかみられず、心臓超音波検査でも心臓に異常は見当たりませんし、狭心症や心筋梗塞の兆候もありません。1992年にブルガダらが報告して以来、同様の報告が相次ぎ、「ぽっくり病」をはじめとする原因不明の突然死の一部を占めるのではないかと考えられるようになりました。
しかし、病気の本態は不明であり、どういったメカニズムで不整脈が発生するのかなど、まだまだ未知の部分が多い病気です。心臓細胞の表面には数種類のイオンチャネルと呼ばれる特殊なタンパク質が存在しており、ナトリウムやカリウムなどのイオン分子を心臓細胞に出し入れすることで心臓の電気活動をコントロールしています。これらのタンパク質の異常により電気活動の異常すなわち不整脈が起こりやすくなることがわかっています。これまでの研究ではブルガダ症候群の患者さんのうち、数割でナトリウムチャネルの遺伝子異常が発見され、これが原因ではないかといわれています。しかしながら、他の症例では発見されておらず、それらは、[1]他のイオンチャネルの遺伝子異常、[2]ナトリウムチャネルでも遺伝子解析の困難な部位(プロモーター、イントロンなど)の遺伝子異常、[3]遺伝子には関係のない後天的な異常、である可能性があります。将来、ブルガダ症候群はいくつかの原因にしたがって再分類されるかもしれません。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035004 |