低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)
【ていずいえきあつしょうこうぐん/のうせきずいえきげんしょうしょう】
Spontaneous Intracranial hypotension(Cerebrospinal Fluid Hypovolemia)
マスメディアを通じて、低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)という病名が注目されていますが、低髄液圧症候群は、「腰椎穿刺(ようついせんし)の処置後に、硬膜(こうまく)にあいた針穴から髄液が漏れ、激しい頭痛が続くことがある」現象として知られたのは、19世紀の古きにまで遡ります。しかし、最近注目されている最大の理由は、「交通事故後、長期間経っても、頭痛、頸部痛、めまい、集中力低下などの症状が続き、治療が効果を示さない患者の少なくとも一部は、低髄液圧症候群である」という事実に、篠永正道先生(国際医療福祉大学熱海病院脳神経外科教授)が2000年に気づき、「ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入、後述)という比較的簡単な処置で完治することがある」ことを世間に発表し始めたためです。
低髄液圧症候群は、1990年代後半には、頭部MRI検査での特徴的な所見を中心に症候群として集大成された感がありました。しかし、篠永先生の提唱する低髄液圧症候群は、上述の教科書的知識から外れた多くの非典型的症例を含み、「慢性疲労症候群」「慢性頭痛」や「線維筋痛症」など、原因不明で難治性疾患の少なくとも一部が、低髄液圧症候群であることを示したことから、医学界への反響が大きく、同時に反発も強い状況が生まれています。なお、髄液圧は正常であることが多く、低髄液圧症候群という名称は誤解を与えるおそれがあるため、「脳脊髄液減少症」(Cerebrospinal Fluid Hypovolemia)へ名称変更が提唱されました。現在、厚生労働省の班研究が進行中です。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035003 |