ゴルフボール
ゴルフボールの表面を見ると、ブランドによってくぼみの形状が微妙に異なる。この形状は、実は特許の塊かたまりなのだという。
ゴルフは年齢を問わず、スポーツ界の華(はな)といえる。
近年は、若手プロゴルファーの活躍がスポーツニュースの一面をよく飾っている。
さて、ゴルフボールのくぼみ(ディンプル)を見てみると、ブランドによって模様や深さが異なることに気付く。
たかがくぼみと侮(あなど)ってはいけない。
この違いには大きな理由があるのだ。
ディンプルの効果としては、大きく二つのことが挙げられる。
「揚力(ようりょく)の増加」と「空気抵抗の軽減」である。
まず「揚力の増加」を見てみよう。
球技一般にいえることだが、ボールを打つときには回転(スピン)をかけるのが普通だ。
ボールを曲げたい、遠くに飛ばしたいなど、都合に応じてスピンをかける。
そのとき、表面に凹凸があれば、それだけ周囲の空気との抵抗が増え、スピンの効果が増大する。
ではここで、スピンをかけて揚力が得られるしくみを考えてみよう。
バックスピンをかけると、ボールの上の気流は速く、下は遅い。
気流は速いと気圧が低くなり、遅いと高くなる性質がある(ベルヌーイの法則と呼ぶ)。
したがって、ボールには揚力が働く。
ディンプルがあると、上下の気流のスピードの差は平らな球よりも大きいため、それだけ強い揚力を受け、ボールは遠くに飛ぶことになる。
打球の軌跡(きせき)は初速、打出角、スピンの三つで決定される。
これを飛びの三要素と呼ぶ。
ディンプルはこの三つ目に関与するのだ。
次に「空気抵抗の軽減」の効果について見てみよう。
物体は空気中を運動するときに抵抗力を受けるが、その最大の原因はカルマン渦(うず)である。
空気の流れが物体から剥(は)がれて渦ができ、この渦が物体の動きを止めようとするのだ。
ディンプルがあると、空気の流れがボール表面から剥がれるのを防ぎ、カルマン渦の発生を抑えられるため、ボールは遠くに飛ぶのである。
このように、ディンプルの大小や浅深はボールの飛び方を左右する。
そこで、ボールメーカーはさまざまな研究からその模様や形を定めているのだ。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567152 |