スピードガン
野球のテレビ放送を見ていると、ピッチャーが投げるボールの球速が表示される。この測定器のしくみとは。
野球やテニスのテレビ中継で、画面のテロップにボールのスピードが表示されることがある。
おかげで、プロのプレーヤーのすごさを知ることができるわけだが、この測定を実現しているのがスピードガンである。
近年では、廉価(れんか)なものなら1万円未満で買えるため、少年野球などでも活躍している。
ところで、スピードガンを向けると、なぜボールの速さが測定できるのだろうか。
それを理解するにはドップラー効果を知る必要がある。
ドップラー効果とは、日常よく経験する現象である。
路上で救急車のサイレンを聞くとき、通り過ぎる前と後では音が違って聞こえる。
近づくときには音が高く、遠ざかるときには音が低くなる。
これがドップラー効果だ。
音の変化は、救急車の速度が速いほど大きい。
そのため、この変化の度合いを調べれば、救急車の速さがわかることになる。
これがスピードガンでボールの速さが測れる秘密である。
しかし、ボールは音を出していない。
どのように測定しているのだろうか。
スピードガンは、ボールに向かって超音波を発信することで、この問題を解決している。
超音波の反射音を測定すれば、球速が測れるのである。
ドップラー効果は波の現象すべてに応用できるため、超音波ではなく電波を発信し、その反射波で測る方法もある。
この機材は高価だが、測定できる範囲が広くなるというメリットがある。
ドップラー効果は、速さを測るしくみとして、さまざまに利用されている。
例えば、オービスと呼ばれる自動車の速度取締機に利用され、ドライバーの運転マナーを監視している。
また、大きな空港にはドップラーレーダーという観測装置が備えられている。
ダウンバーストと呼ばれる強い下降気流を測定し、飛行機の発着を安全にするものだ。
気流にレーダーを当て、その反射波の変化から気流の速さを観測している。
さらには、医療の現場でも利用される。
血管を流れる赤血球の速度を測り、血流が正常かどうかを調べるのだ。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567153 |