無洗米
研がなくても、おいしいご飯が炊ける「無洗米」。従来の米とどう違うのか。また、どのように作られているのか。
古来、日本人の習慣として、米を炊(た)く前にまず研(と)いでいた。
しかし近年、研がなくてもいい無洗米(むせんまい)が市販され、人気を博している。
忙しい現代人にはたいへんありがたい商品だ。
無洗米の製法を理解するには、米が精米される過程を知っておく必要がある。
まず、稲から刈り取られて脱穀(だっこく)された籾(もみ)からはじめよう。
籾から殻を剥がし、中身を取り出すことを「籾摺(す)り」と呼ぶ。
取り出された中身が玄米(げんまい)だ。
玄米は栄養価が高く、そのままでも炊いて食べられるが、通常はさらに表面から糠ぬかを剥がして白米(はくまい)にする。
この過程を精米(せいまい)と呼ぶ。
この白米が米穀店やスーパーなどで売られる普通の米だ。
白米も、玄米と同様にそのまま炊いても食べられるが、白米に残っている糠成分(肌糠(はだぬか))を剥がすとさらにおいしく炊けるようになる。
この「肌糠剥がし」の過程が「米を研ぐ」という行為なのである。
無洗米は、白米に着いた肌糠をあらかじめ剥がしておくことで、私たちが「米を研ぐ」手間を省いてくれているのだ。
では、どうやって剥がすのだろうか。
いくつもの方法が開発されているが、ここでは大きなシェアを占めている「BG精米製法」を紹介しよう。
これは糠で糠を削り取る方法で、「糠と糠、そして糠と金属が付着しやすい」という性質を巧みに利用している。
しくみはそれほど複雑ではない。
白米をステンレス製の筒内に入れて攪拌(かくはん)しているのだ。
白米が攪拌されると、肌糠がステンレス壁に付着する。
この付着した肌糠に他の米粒の肌糠が次々と付着し、ほとんどの肌糠が米から分離されるのである。
ちなみに、玄米を白米にする精米機も似たしくみを利用している。
精米機の中で玄米同士をすり合わせ、その摩擦で糠をこすり取っているのだ。
無洗米というネーミングに「米は『研ぐ』ものであって『洗う』ものではない」と異議を唱える人も多い。
現在では、「米を洗う」と言う人も増えており、どちらを使っても許されるようだ。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」 JLogosID : 8567038 |