エピジェネティクス
【えぴじぇねてぃくす】
epigenetics
生物学・遺伝学の研究分野。DNA配列自体に手を加えることなく後天的・化学的に修飾するメカニズムを研究する。これまでも、DNA配列そのものが先天的に変化する突然変異は知られていたが、遺伝情報を保持したままその発現・非発現をコントロールするメカニズムが解明されはじめたのは21世紀に入ってからのことだ。
ヒトの体は数十兆個の細胞からできているが、これらは皆たった一つの受精卵から増殖した細胞であり、当然皆同じ遺伝子を有している。にもかかわらず、ある細胞は眼球に、ある細胞は肝臓に相応しい機能を獲得するよう分化できるのは、このエピジェネティックな仕組みのおかげである。
三毛猫の毛色が決定される際にもこの機構が働いている。三毛猫の雌は、各細胞内に茶毛か黒毛かを決める遺伝情報を持ったX染色体を2本持っているが、このいずれかがエピジェネティックな機構によりにランダムに抑制され働かなくなるため、あのような三毛模様ができるのだ(雄は毛色を決めるX染色体を1本しか持っていないため、ごく稀な突然変異が起こらない限り三毛にならない)。
なおエピジェネティクスの具体的メカニズムとして、(1)DNA塩基のメチル化、(2)ヒストンたんぱく質の化学修飾、の二通りあることが解明されている。さらにこうしたエピジェネティックな機構の機能不全が様々な疾病(ICF症候群・レット症候群など)の原因となっていることもわかってきた。今後の解明が待たれるところだ。
JLogos編集部
| Ea,Inc. (著:JLogos編集部) 「JLogos」 JLogosID : 12660135 |