【東京五つ星の鰻と天麩羅】天麩羅の名店厳選52軒 > 台東区
江戸平
【えどへい】

谷崎潤一郎ゆかりの店

昭和7年(1932)に総武線のガード下に店を構え、戦後、目と鼻の先の現在地に移った。3代目の主人・田中満治さんは壁に視線を向け「あの色紙は昭和16年に谷崎潤一郎さんが書いてくれました」と、にこやかに話す。谷崎は戦前戦後を通じてこの店を贔屓にした。色紙には「空を行く 電車の下にかヾまりて 油にしみて くふうまさかな」と綴られている。
俳優の片岡千恵蔵や市川右太衛門、落語家の柳家小さんらも馴染み客だったという店ながら、木造モルタル2階建ての造りはいたって大衆的。値段も高くない。いかにも下町っ子らしく気さくな人柄の店主夫婦と、ほがらかな娘さんの3人で切り盛りしている。
天ぷらは、ふっくらと軽く揚げる江戸前。4~10月には関東では珍しい、琵琶湖産の鮎の天麩羅が味わえる。琵琶湖の鮎は湖だけで育つため小振り。9月下旬からひと月は子持ち鮎になる。11月中旬~2月の鱈の白子天麩羅も評判がいい。
![]() | 東京書籍 (著:見田盛夫/選) 「東京五つ星の鰻と天麩羅」 JLogosID : 14070786 |