【東京五つ星の鰻と天麩羅】天麩羅の名店厳選52軒 > 台東区
中清
【なかせい】

名物は雷神揚げ

幕末に駿河国から上京した初代・中川鉄蔵氏は、雷門通りに開いた天ぷらの屋台から身を起こし、明治3年(1870)浅草寺の近くに中清の看板を上げた。以来130年余にわたり同じ場所で商いをつづけ、当主で6代目を数える。戦後に建てられた建物は重厚な蔵造り。12ある個室はすべて落ち着いた数寄屋造りで、池のある中庭を囲み、離れのように配されている。
天ダネに野菜は使わず、海老、穴子、きす、めごちなど魚介を胡麻油だけで揚げる天ぷらはまさに江戸前。名物雷神揚げの、厚さ5~6㎝、直径12~13㎝という大きさも江戸っ子好みだ。
これは芝海老と青柳の貝柱を使ったかき揚げで、名付け親は仏文学者の辰野隆氏。雷門の雷神が背負っている雷太鼓に、その形が似ていることから命名したという。
土地柄も手伝ってか店の馴染み客には作家や風流人、落語家、漫才師、役者などが多く、永井荷風は大正元年(1912)に発表した小説『新橋夜話』にこの店を登場させている。
![]() | 東京書籍 (著:見田盛夫/選) 「東京五つ星の鰻と天麩羅」 JLogosID : 14070777 |