うなぎパイ
【うなぎぱい】
「うなぎパイ」は、なぜ「夜の」お菓子?
浜松名物「うなぎパイ」は、東海道新幹線開通当初から車内販売がおこなわれている定番の土産ものである。ウナギの中骨を粉末にして生地に焼き込んだパイに、「夜のお菓子」というキャッチフレーズがつき、赤と黒の精力増強剤を思わせる色使いのパッケージで、いかにも男性をターゲットにしているように見える。しかしこれは、発売当初にメーカーがめざしたものとはまったく異なり、消費者の側からつくり上げられていったイメージのようだ。「うなぎパイ」発売元の浜松のメーカーは、元来和菓子屋としての歴史を持っていたが、太平洋戦争後に洋菓子部門へ参入。その後一九六一(昭和三六)年に、近くの浜名湖名産にちなんだものとしてこのパイを考案した。ちょうど高度経済成長時代であり、東海道新幹線や東名高速道路が開通したこともあって、発売後は右肩上がりに売り上げをのばした。交通網の整備とともに売り上げが成長したのだ。キャッチフレーズは、そんな交通網を念頭に置いて、出張帰りにお土産としてお父さんが買って帰った菓子を、その「夜」の家族団欒で食べてほしいという意味でつけたものだという。それが、ウナギ中骨の粉末ばかりか、ニンニクも入っているということで、男性の精力増強に役立つような印象を与えてしまい、消費者のほうがおもしろ半分に買ったり食べたりするようになっていった。メーカーは、それならいっそ評判に乗って売ろうと、それまでの浜名湖をイメージした青いパッケージデザインを、その頃人気だったドリンク剤に合わせて、赤と黒が基調のものに変えた。メーカーも消費者の遊び心に応えたのが、長い人気商品となる結果につながったのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全2」 JLogosID : 14820086 |