美人の基準
【東京雑学研究会編】
§いつでもどこでも失神してみせます!
どんな女性が美人かという基準は、時代とともに変わる。日本において江戸時代は浮世絵に描かれているような「引き目かぎ鼻」の顔がそうだった。それ以前は下ぶくれのおかめ顔が好まれた時代もあったことが、古い絵巻物などでわかる。
ヨーロッパにおけるアール・ヌーヴォー期の美人の基準は、その時代の絵をみればわかるように、清楚でロマンチック、青白い顔のひよわな印象の女性が好まれた。
健康的ではちきれそうな肉体を持つ若い娘たちは、なんとかひよわで病弱な印象をかもし出せるよう、工夫をこらすことになった。
そのとき選んだ手段が「失神」。すぐに気を失ってみせることで、世間の刺激に不慣れな、守ってあげなければ・・と男性に思わせる女性を演じたのだ。いつでも、どこでも、必要だと思われるときに失神できるよう、女性たちは練習を積む。さらに、抱き起こしてもらえるまで失神していられるよう、好みの時間まで調節できるようにしたという。
しかしこれは、必ずしも女性たちの意思だけによるのでなく、肉体的な条件もともなっていたようだ。
というのは、当時の女性はウエストをコルセットでギュッと締めつけて体型を補正していた。四六センチのサイズのものが作られた記録もあり、これでは食事を摂れないどころか、呼吸すらそーっとしなければならなかったはずだ。そのために本当に苦しくて失神するケースだって少なくなかったのである。
なお、本当に苦しさから気を失った場合、その気つけ薬として香水が使われたともいう。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670792 |