ドライビール
【東京雑学研究会編】
§飲み物なのに「ドライビール」とはどういうことか?
日本酒には「甘口」とか「辛口」という区別があり、酒好きのこだわるところであるが、これらは酸度と発酵度(アルコール量)から計算された指標である。ドライシェリーとかドライジンと呼ばれるお酒と同じように、ドライビールの「ドライ」は、一言でいえば「辛口」ということになる。
つまり、糖分がより多く発酵してアルコールになっているので、甘みにつながる糖分の残量が少なく、アルコール含有量が若干高くなったビールを「ドライビール」と呼んでいるのである。日本のビール業界では、さらに苦味(イソアルファ酸)を三分の二(一リットル中一五ミリグラム)まで減らしているので、飲みやすくなっている。
製造方法としては、麦汁を作る工程で酵素の働きをフル回転させ、できるだけ糖化を促進させる。次に、発酵工程で糖をよく食べる酵母を用い、発酵度を上げるのである。
酵母も酵素力の強いものが使われている。「アサヒ・スーパードライ」の場合、「三一八酵母」別名「辛口酵母」を用いて高発酵させているので、アルコール度は普通のビールより〇・五%高くて、五%である。
「ドライ」になると、あと口がスッキリしていて、キレのあるのど越しを楽しめる。くせや雑味がないという。しかし、その分、味の深みやコクがなくなるので、本格派のビール好きにとっては物足りない味らしい。
「ドライ」の語感で、男性のビールというイメージを持ってしまうが、実は女性に好まれる味と言えそうだ。ちなみに、一九八七(昭和六二)年に発売された「アサヒ・スーパードライ」は今でも安定した人気があるという。
新製品がぞくぞくと出てくる今日のビール業界。いろんな味を試し飲みでき、自分好みの選択の幅が大きくなり、「ちょっと一杯」の楽しみが増えたことは事実である。ただし、飲みすぎにはご注意!
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670688 |