つけボクロ
【東京雑学研究会編】
§つける場所にも意味がある!つけボクロのおしゃれ
女性のおしゃれへの探究心はあくなきものがあり、いったんブームとなれば乗り遅れまいと誰もが歩調をそろえるものだ。それは今も昔も変わりなく、一七世紀ヨーロッパでは、それがつけボクロとなって姿を現した。
フランスでは「ムーシュ(蝿)」、イギリスでは「パッチ(つぎはぎ)」と呼ばれ、黒い絹や紙を好みの形に切り抜いて裏にゴム糊をつけて貼りつけるのだ。エリザベス朝時代に書かれた戯曲には「ビューティ・スポット」と呼ばれる描きボクロが登場しており、それがよりはっきりした形になったのがつけボクロのようだ。
つけボクロは、つけているとわかるからこそおしゃれだったから、形も星、月、ダイヤなどのはっきりした形が好まれ、フランスでは、貼りつける場所によって目の近くは「情熱的なムーシュ」、口のそばなら「コケットなムーシュ」などと、意味を持たせてアピールするようになっていく。
ほかにも、口とあごの間なら「沈黙」、額の真ん中なら「威厳」、鼻の頭なら「恥知らず」といったように、とんでもない場所に貼って、自分をアピールした。
一八世紀になっても流行は続いた。もともとは、顔にできたニキビの跡や傷を隠すのにつけボクロを利用していたのだが、当時は天然痘の跡のアバタのある人も多く、その流行が完全にファッションとして定着したのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670626 |