スミレ
【東京雑学研究会編】
§三色スミレはほれ薬
シェイクスピアの作品を読むと、三色スミレがたびたび登場する。例えば、シェイクスピアの喜劇『真夏の夜の夢』では、この三色スミレは「ほれ薬」として登場している。
この話は、公爵の結婚式が目前に迫っているある夜の話だ。廷臣の娘ハーミアは、父が決めた結婚相手のディミートリアスを好きになれず、ほかに愛する人がいた。ハーミアは、愛する人と二人で森の中へと逃げてしまうのだった。
それを知った結婚相手のディミートリアスも、ハーミアの後を追いかけて森へと向かう。
そんなディミートリアスのことを恋こがれているヘレンという女性がいた。彼女もまた、彼の後を追って森の中へと入っていくのだった。
そんな恋する人々が集まった森の中で、妖精のパックが「ほれ薬」を与える相手を間違えてしまい、話はますますおもしろくなるわけだ。
ここで妖精パックが使った「ほれ薬」とは、三色スミレの汁のことである。
もともと三色スミレには、さまざまな言い伝えが残されている。それによると、三色スミレの花の汁を眠っている間にそっとまぶたの上にぬると、目覚めたときに「恋でもしようか」という気分になるらしい。
また、「天使が三回キスをしたから三色になった」というかわいい言い伝えも残されている。
とにかくシェイクスピアが三色スミレを、大変に気に入っていたことは確かなようだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670511 |