観音様
【東京雑学研究会編】
§観音様は男か女か?
観音様の像は線の細い穏やかなものが多い。ウエストは細く、指先や顎の線もやわらかいから、つい女性のような印象を持ってしまいがち。けれども、よく見ると観音様の鼻の下にはヒゲがかかれている。上半身を見ると胸もない。一体、観音様は男性なのだろうか? それとも女性なのだろうか?
このことを説明するには二つの説がある。
一つ目の答えは「元・女性の男性」。仏教の教理では女性は菩薩になることはできなかった。奈良の法華寺の十一面観音像のモデルと言われ、病人の膿を口で吸い出してあげていたという光明皇后でさえ、一度男性になってから菩薩にならなければいけなかったという。
だから仏師は観音様の像を彫るとき、女性的な面を強調し、やむを得ず(?)つけなければいけなかったヒゲはあくまでも細く、美しく、できるだけ女性らしさを損なわないように彫っていたものらしい。
二つ目の説は、男性なのだがキリスト教などの影響を受けて、女性化したというもの。
「観音」はサンスクリット語で「アヴァローキテーシュヴァラ」といい、大乗仏教の代表的な菩薩だ。菩薩とは、悟りを開いた「仏」「如来」に次ぐ存在だが、すべて男性とされている。
インドでは女性蔑視の思想があり、菩薩像も当然のように男性の姿をしたものばかりだった。中国に仏教が伝わった当時も観音様は男性の姿で表現されていたのだが、道教以外の宗教が禁止された後、キリスト教徒は観音様の姿を借りて聖母マリアを信仰し、仏教信者もそれをまねて、やがて女性的な観音様が一般化したという。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670229 |