オートクチュール
【東京雑学研究会編】
§オートクチュールとプレタポルテはどう違う?
シーズンに先駆けて、〇四~〇五秋冬、とか、〇五春夏といったタイトルで開かれるコレクション。パリやミラノ、ニューヨークなどが著名だが、あちこちの店や著名なデザイナーが開くファッションショーを統括してこう呼び、さらに、オートクチュールコレクションとか、プレタポルテショーといった区分もされている。
どちらも値段の高いブランド品ということはわかっても、中身がどう違うのかはっきり認識しているのは、こうした店やデザイナーの上得意の客ぐらい。雑誌や映像で眺めるだけの庶民は、「こんなのが流行するのか」「この色が人気なのね」とわかるだけで充たされる。
しかし、たとえ顧客にはなれなくても、違いくらいは知っておこう。
オートクチュールとは、日本語に直すと「高級注文服」とされているが、一人の顧客のためだけの、世界にただ一つのドレスのことだ。クチュリエと呼ばれるデザイナーに依頼をすると、依頼主のサイズに合わせて生地選び、デザインが決まり、採寸、仮縫いを繰り返して完成する。その年、そのシーズンにデザイナーが目指す方向性が、いちばん如実に表現されるのがこの分野である。
一方のプレタポルテは、「高級既製服」と訳されていて、クチュリエと区別してスティリストと呼ばれるデザイナーが、訪れた客がそのまま持って帰れる状態に完成して自分の店に並べてある服のことだ。もちろんサイズ直しなどの補正はしてくれるが、既製服とはいえデザインの指向性ははっきりしているから、それを崩してまでの補正はしない。あくまでこのドレスに合う体にシェイプするなりパッドを使うなりしてくださいという誇りは捨てていない。
かつてはオートクチュールが主流だったコレクションも、豊かな貴族階級も減り、プレタポルテの客なしには成り立たない傾向にある。クチュリエを主任デザイナーに迎えてプレタポルテ・ブランドを作ったり、クチュリエが自分ブランドのプレタポルテ分野もあわせ持ったりという傾向にあり、オートクチュールとプレタポルテの差は価格と顧客のエリート意識への欲求度くらいしかなくなりつつある。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670123 |