アリ②
【東京雑学研究会編】
§働きアリは、仕事のあとに一服いれている!?
古くから、働きアリは働き者の代名詞とされてきた。
イソップの『アリとキリギリス』は子どもでも知っているし、ローマの博物学者プリニウスは、『博物誌』に「月の見えない夜を除いて、昼夜を分かたず餌運びにはげみ、人間以外で、唯一仲間の死骸を土に埋める生物」と記している。
ギリシア神話では、アリは妖精が姿を変えたもので、巣を壊してはいけないとされている。また、アイギナ島の住民が疫病で全滅したとき、ゼウスは、その島の王を哀んで、アリをその島の住民にしてやった。これも、アリという生物が、好意をもって見られていたことの表れだろう。
だが、働きアリとて、休む間もなく働いてばかりいるわけではない。
オーストラリアに棲むニクアリは、晴天の日の夕方には巣穴から出てきて、働いているときとは違った行動を見せる。入り口付近や芝生で、意味もなさそうに触覚を振ったり、仲間同士でじゃれあったり、くつろいでいる様子だという。
日本の黒アリも、ニクアリほどではないが、よく似た行動をとるというから、庭先にアリの巣があったら、観察してみるといいだろう。
ボルネオのジャングルにいるトゲアリは、早朝、大シダなどの葉の上で、じっとしているという。一匹だけのこともあれば、数十匹が固まっていることもあるそうだ。
ニクアリが、一日の仕事を終えて一服しているとしたら、こちらは仕事に備えて英気を養っているところだろうか。
現在、これらの行動の本当の理由は、はっきりとは解明されていないが、何らかの休息行動であろうと考えられている。
いくら働き者でも、適度な休みをとらなくては、働き続けるのが嫌になってしまう。私たちも、アリたちを見習って、堂々と休みをとりたいものだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670031 |