握手
【東京雑学研究会編】
§握手に秘められた本当の心理とは?
握手という習慣は、本来は日本になかったものだ。初対面であれ、親しい人との毎日の挨拶であれ、お辞儀が礼儀だった。よほどの感謝とか頼みごとのときに手を取るということがあっても、それは、一方が相手の手を両手で握りしめるというしぐさで表されていた。
それが、欧米の文化が入ってきてから日本でも握手の習慣が根付くのだが、今でもそれは外国人が自然に手を差し出すような挨拶としてより、親しさ、親近感を表そうとするときに使われることが多い。例えば選挙のときに立候補者が道行く人に手を差し出すとか、ファンがアイドル歌手に手を伸ばすといったようなケースだ。
これは、ボディタッチが、触れ合った相手により深い親近感を感じさせることを、日本人が知った結果だ。外国人のように、自然に抱き合ったり、頬にキスして相手に親しみを覚えていることを伝える習慣のなかった日本人にできる、ギリギリのボディタッチが握手というわけだ。
もちろん、肩をたたいて励ますとか、背中をなでて慰めるといったボディタッチはある。しかしこれは衣服の上からであり、触れる側からの一方的なコミュニケーションでしかない。
握手なら、じかに肌が触れ合い、相手の体温を感じることができるうえ、差し出された手を握り返すことで、相互の親密感も生まれる。それを求めるゆえに、選挙民の支持を得たい立候補者は手を差し出しているのだし、ファンをひきつけておきたいアイドルが、握手会を開いたりするわけだ。
外国人が、初対面であっても手を差し伸べて握手を求めてくるのは、このボディタッチの効果をよく心得ているからで、自分の存在をアピールし、もしかしたら警戒心を抱いているかもしれない相手の心をやわらげ、よいコミュニケーションをしたいと考えているという表れなのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670006 |