ハイブリッド手術室
【はいぶりっどしゅじゅつしつ】
手術台と心臓・脳血管X線撮影装置を併設した治療室で、2010年代以降、普及が進んでいる。高解像度の血管撮影装置とモニター、手術台を備えていることによって、循環器内科医によるカテーテルと呼ばれる医療用の管を使った治療と、外科医による手術が同じ手術室で可能となる。
ハイブリッドには「異質なものを組み合わせる」という意味があり、車の場合はガソリンと電気で動く車を指すが、ハイブリッド手術室は外科手術と、血管造影やカテーテルを使った血管内治療の両方を組み合わせてできるよう、「ハイブリッド化」した手術室ということになる。
これによって、カテーテル治療中に不測の事態が起きた際には、全身麻酔や緊急手術に対応できるのが最大のメリット。カテーテル治療と外科手術であるバイパス手術が必要な患者に対して、1日で両方ともでき、患者の肉体的・経済的負担も減らせるメリットがり、導入する病院が増えている。
ハイブリッド手術室の普及に伴い、大動脈弁狭窄(きょうさく)症のカテーテル治療が可能な病院が増えている。大動脈弁狭窄症は、心臓の出口にある弁の動きが鈍り、開閉が十分にできなくなって血液を全身に送るのに支障が出る病気。従来は開胸手術をして人工弁に置き換える治療だった。カテーテル治療は、足のつけ根などからカテーテルで人工弁を心臓まで運んで留め置く治療法で、「経カテーテル的大動脈弁留置術」(TAVI)と呼ばれる。2013年10月に公的医療保険が使えるようになった。
この治療法をするには、関連学会でつくる協議会による基準を満たす必要があり、ハイブリッド手術室も要件となっている。同協議会は認定要件として、次のようなものを設定している
・空気清浄度がclassⅡ(清潔区域)以上
・設置型X腺透視装置を備える
・速やかに開胸手術に移行が可能
ハイブリッド手術室は、モニター画面が大きく鮮明なため、腹部や胸部の大動脈瘤のカテーテル治療でも使われる。ハイブリッド手術室でなくても可能な治療だが、治療中に異変が起きた場合、外科手術を組み合わせた「ハイブリッド治療」への移行が可能になるメリットもある。(2016/1/12:A)
| 時事用語のABC (著:時事用語ABC編集部) 「時事用語のABC」 JLogosID : 14425625 |