キプロス金融危機
【きぷろすきんゆうきき】
キプロス共和国の金融機関の経営が悪化し、その支援策を巡ってユーロ圏全体を巻き込んだ経済危機のこと。
キプロスはトルコ南方沖に位置する島国で、日本の山形県ほどの規模にあたる。1960年に英国から独立。人口は同国政府統計で86万人だが、1974年にトルコ軍が侵攻した北部地域の住民も合わせ約110万人とされる。観光と並び、かつてはタックスヘイブン(租税避難地)としても知られた「金融立国」。ただ、ロシアなど欧州各国から不透明なマネーが流れ込んでいるとして国際的に問題視されていた。
しかし2008年のユーロ圏加入に伴い、マネーロンダリング(資金洗浄)対策が進んだことで金融機関の経営が悪化。さらに進出先の近隣のギリシアが債務危機に陥った影響で巨額の損失を出し、キプロス政府が公的支援の必要に迫られた。
支援額は175億ユーロ(約2兆円余)と同国の名目GDPに匹敵する巨額のため、同政府はユーロ圏諸国に支援を要請。これに対し、ユーロ圏諸国は、キプロス国内の銀行預金に課税するなど自力で58億ユーロを捻出するなどの一定の条件を付きつけた。
キプロス国民や議会の反発が根強く、少額預金者への課税を見直す動きが出たが、銀行は閉鎖。商店が現金以外は受け付けないなど同国の国民生活に深刻な影響を与えている。
日本を含む世界経済への波及は小さいとみられるが、キプロスの金融危機は、ユーロ体制が危うい状況に立たされている現実を改めて示した。
| 時事用語のABC (著:時事用語ABC編集部) 「時事用語のABC」 JLogosID : 14425470 |