教育とは〈他者〉を正しく知らしむべきものである
【名言名句】
教育とは〈他者
〉を正しく知らしむべきものである
【解説】
音楽についていえば、世界には実に多くの、多様な音楽が存在する。古いものもあれば、今まさに誕生しつつあるものもある。私たちになじみ深い西洋音楽のパラダイムでは到底理解できないものも多い。そして、それらのあいだに優劣など存在しないのだ。それらはすべて対等であり、個別の環境においてつくり出されてきたものであることをこそ教えるべきである。恣意的な美的価値基準を押しつけてはならない。
戦前の、「何でも日本が一番」などという価値観で物事をみることは、およそ教育とは最もかけ離れた態度なのである。当然のこととはいえ、常に自戒を忘れず、この言葉に立ちかえりたい。
【作者】武満徹
【生没年】1930~96
【職業】作曲家
【出典】『音、沈黙と測りあえるほどに』
【参考】この言葉は戦前の教育に対する反省を踏まえたものである。作曲家は旅行先のパリで自分のレコードのジャケットに富士山と舞妓が印刷されているのを見かけて、はずかしめられたような気分を味わったという。彼にとって富士山は、世界=他者を客観的に認識させようとしなかった戦前の日本という国家の象徴であった。
| あすとろ出版 (著:現代言語研究会) 「名言名句の辞典」 JLogosID : 5450531 |