鍼灸学校
【はりきゅうがっこう】
鍼灸学校では東洋医学を学ぶ?
鍼灸学校の修業年数は3年間で、多くの学校には昼間部と夜間部とがあります。入学者には、高校からそのまま進学してくる人よりも、20代半ばでアルバイトをしながら(学費は親ががり)新しい分野に自分の可能性を求めてくる人の方が多いようです。
昼間部の生徒に比較的多いのが、家庭の主婦です。女性が結婚や出産で企業を退社すると、出産後の復帰は難しく、かといってパートの仕事は物足りないといった理由で、多少習得にお金がかかっても手に職をつけられる業種を選ぶのでしょう。また、昼間部の9時半から3時という時間帯が、主婦にとって通いやすい時間であるのも一因です。一方、夜間の生徒をみると、高校からそのままという人の割合は昼間部より少なく、男女とも20代後半から30代の会社員の割合が増えます。また、いち早く定年後の準備に取りかかろうと、50代後半で入学してくる人もいます。
これらの各年齢層の人たちに、医療系の専門学校のうち鍼灸学校を選んだ動機を聞いてみると、必ずしも東洋医学を学びたいというものではないようです。もっとも多い動機は、「独立開業権があるうえに、国家資格という免許に魅力を感じる」というものです。とくに高校から上がってきた人や定年間近の人たちにはこの傾向が強く、国家試験に通ることを目的とするので、学問の内容的な部分に興味を持って入学してくる人は多くありません。
鍼灸の国家試験の出題内容のうち、純粋に東洋医学に関するものは5分の1くらいで、ほかは現代医学のものです。そのため3年間のカリキュラムをみても、東洋医学に関するプログラムは微々たるもので、さらにそこに力を入れている学校とそうでない学校とがあります。したがって、個人的な学習意欲の違いも考慮すると、卒業生の間には相当な格差が生まれています。
以上のことを総合すると、鍼灸師はみな東洋医学のスペシャリストであるとはいえないことがわかります。そこでみなさんが受診する際には、自分の希望する治療をしてもらえるかどうかを、十分確認することをおすすめします。また本辞書の6章では、きちんとした東洋医学の知識がある先生の見分け方も紹介していますので、参考にしてください。
| 日本実業出版社 (著:関口善太) 「東洋医学のしくみ」 JLogosID : 5030110 |