気の運動と経絡
【きのうんどうとけいらく】
◆気の運動形態
経絡の循行(体内での流れ方)の基本は「内外を貫いて上下を通じる」といわれています。
経絡の運行部分は比較的体表面に近いところにありますから、体の内部にある五臓六腑(で作られた気や血)と体表をつなげる役目が「内外を貫く」で、体表に出てきた気・血を手足や頭などへ運ぶ役目が「上下を通じる」ということです。
気の基本的な運動形態として「昇降出入」という言葉があります。「昇降」とは、気が体内を上にいったり下にいったりすることです。上にいく最大の目的は、もっとも重要な頭部に栄養を供給することで、下がる方は足への栄養供給もありますが、体内の老廃物を頭部から遠ざけて、大小便として出すために下方へ送ることが最大の目的になります。
◆体にある穴を通じて五官が働く
もう一つの「出入」については、臓器から体表へ出てくることに加えて、「五官九竅(きょう)」(五感と体にある9つの穴という意味)を通じて体の外と交流する機能も含みます。
東洋医学では目、鼻、耳などの穴は特定の臓器と連絡しており、穴を通して外界と交流することで五官が働くと考えます。その交流を担当しているのが気なのです。
たとえば、物が見えるのは肝の気血が目に栄養を与え、目を通して外界と出入りするからといわれます。だから、目や耳、鼻などの穴を閉じると五官が鈍くなるのです。
また、目や耳のように役割のはっきりした大きな穴だけでなく、体表面のすべてにごく微細な穴が無数にあって、そこからも気が出入りしていると考えます。「殺気を感じる」とか「閉所恐怖」など、五官(五感)に属さない感覚や皮膚呼吸はこういう穴によるものなのです。
以上のように、気の「昇降出入」運動形態をもとに、経絡が上下内外を連絡することで、人体を一つの有機体として活動させることができるのです。
| 日本実業出版社 (著:関口善太) 「東洋医学のしくみ」 JLogosID : 5030091 |