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東洋医学のしくみ2章 東洋医学ではこう考える >

血と津液
【けつとしんえき】

「血・津液」とは物質性の高い体液

◆「血」と血液の違い
 血(けつ)と津液(しんえき)はともに液体で、気よりもずっと物質性が高いものです。現代医学の血液・体液に近いのですが、決してイコールではありません。
 たとえば血について、全身に栄養分を行き渡らせるという作用がありますが、これは東洋医学をまったく知らなくても容易に理解できるでしょうところが、血とは精神活動を支えている物質で、血が不足すると不眠とか不安、健忘などの症状が出るのだといわれると、血液だけのイメージとはちょっと違ってきます。
 また、血がどこで作られどう体内を循環するかについては“脾臓で作られ、心臓の力で「血脈」と「経絡」を循環して肝臓に貯えられる”と考えます。まず、血脈と経絡という2つの循環経路を経て1か所に貯えられるというのは、現代医学と比べて大きな違いでしょう
 さらに、脾臓や心臓などの臓器自体も現代医学のそれとはかなり意味合いが違っており、比べることにもともと無理があります。
 何よりも現代医学では、血液の構成成分を赤血球白血球血小板などに分類するのに対して、東洋医学だと「血は血」、それ以上細かく分けて考えることはないのです。

◆精血同源とは
 血は水穀の精微(食べ物の栄養)から作られるだけでなく、営気(栄養作用の強い気)と津液の合成によってもできるし、また「精(せい)」という物質からも作られます。
 精とは生殖を支える血に似た物質で、遺伝によって親から子へ受け継がれるものです。これを「先天の精」といいます。腎臓に貯えられた精は骨の髄を生み出し、骨の髄から血ができるのです。
 骨髄で血液が作られる部分に限れば現代医学と共通します。しかし「精血同源」といって精が足りなくなると血が精に変わるという観点は、東洋医学ならではの考え方です。

◆血以外のすべての体液が「津液」
 津液は、消化された食べ物の水分が小腸と大腸から脾臓へと運ばれて作られます。
 血以外の体液すべてを津液というのですが、胃液やリンパ液、脳漿などから唾液、涙、汗までひとまとめにするのは乱暴だと思う人もいるでしょう。しかし、体内各所を潤すことが津液の主要な役目だと考えれば何の不都合もありません。目を潤す津液を涙、脳を潤す津液を脳漿と呼ぶだけのことです。
 脾臓で作られた津液は「三焦」という津液専用の経路を通って体内各所に運ばれ、利用されたあとは腎臓に送られて、「清」と「濁」に分離されます。清は再利用され、不要な濁は膀胱に送られて尿になるのです。
 体液の経路ということから「三焦」は現代医学でいうリンパ管と考えたくなりますが、これもイコールではありません。津液の流れがおかしいときにリンパ管に針治療を施すことは絶対にないわけで、針を使うなら三焦のツボに打つことになります。
 繰り返しになりますが、現代医学と東洋医学では生理観の概念が違います。たとえば津液の運搬には脾臓や肺の力が必要で、それには気(臓腑の気)が大きく関わってくるのです。




日本実業出版社 (著:関口善太)
「東洋医学のしくみ」
JLogosID : 5030047


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出版社:日本実業出版社[link]
編集:関口善太
価格:1,620
収録数:115
サイズ:20.8x14.8x1.6cm(A5判)
発売日:2003年7月
ISBN:978-4534036179

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