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標準治療コラム > 歯科・口腔外科

歯周病と全身性疾患との関連
【ししゅうびょうとぜんしんせいしっかんとのかんれん】

 歯周病を起こす細菌はいく種もわかっていますが、代表的なものにギンギバリスとデンティコーラがあります。これらの細菌が何かの拍子に口腔内から血管に入り込み、全身を駆け巡るとなれば、何らかの影響が出てきても不思議ではありません。その影響は、細菌そのものが起こす場合もあれば、細菌によって起こった炎症から出た炎症物質が原因となったり、あるいは細菌と戦う白血球が過剰に活性化されたことによるものもあります。

1)低体重児出産、早産、流産
 母親が歯周病にかかっている場合に、その病原菌が血流に入り、胎盤を通して胎児のほうに移行すると、胎児の成長が阻害されることがあります。その結果、月が満ちて生まれているにもかかわらず、小さな赤ちゃんが生まれます。また、出産の時期はプロスタグランジンという物質の存在によって調節されていますが、歯周病に罹患していると、このプロスタグランジンが増え、その結果、出産時期に変調をきたしてしまいます。これまでは、流産の原因は遺伝的な素因を重視してきましたが、これからは感染についても注目されるでしょう。

2)心臓血管系疾患
 歯周病で細菌感染を起こして生産された炎症メディエータが、歯周組織を破壊するとともに、血流に乗って頸動脈や冠動脈にアテローム(粥状)硬化を起こしていることがカナダのトロント大学や東京歯科大学でも確認されました。また、熊本大学では、ギンギバリスが血栓を形成するメカニズムも解明しています。したがって、血管内に血栓ができる心筋梗塞などの心臓疾患が起こりやすくなるのでしょう。

3)糖尿病
 今までは、糖尿病の患者さんは歯周病にかかりやすく、しかも治りにくいというのが歯科医の常識になっていました。ところが、アメリカのノースカロライナ大学の研究は、歯周病を治すと糖尿病患者のHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)値が低下したという発表をしており、岡山大学でも同様の研究発表をしています。このことは、歯周病糖尿病がそれまでいわれていた一方向の影響ではなく、双方向の影響であると考えられます。
 歯周病にかかると、急性炎症反応の指標としてのCRPが上昇しますが、その結果、肝臓に影響が出て肝臓のグルコース代謝が障害されます。そこから糖尿病の前段階といえる病態が生じ、次第に悪化して糖尿病になると思われます。さらに、歯周病でしかも糖尿病の人と、歯周病ではないが糖尿病の人を比べると、心臓血管系疾患のリスクは前者のほうが高いというデータもありますから、歯周病は歯の寿命だけでなく、生命そのものの鍵となりかねません。 (指宿真澄




寺下医学事務所 (著:寺下 謙三)
「標準治療」
JLogosID : 5036631

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編集:寺下 謙三
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