子宮発育不全
【しきゅうはついくふぜん】
Uterine Hypoplasia
女児の場合、胎芽(たいが)と呼ばれる胎児の早い時期に、ミュラー管という2本の管状の組織が癒合し子宮および卵管、膣が形成されます。この過程が正常に経過しないと様々な奇形や子宮の発育不全が生じます。代表的な疾患として子宮の発育不全が重篤で、痕跡的な子宮のみを認めるロキタンスキー・キスター・ハウザー症候群(Rokitansky-Kuster-Hauser syndrome、以下、ロキタンスキー症候群)があります。外陰部および卵管・卵巣は正常でありながら、ミュラー管が発育しないため、子宮および膣が形成されない症候群です。子宮発育不全のため月経は起きませんが、卵巣機能は正常で、二次性徴(女性・男性の特徴、差異がよりはっきり現れること)にも異常はありません。
胎児期に形成された子宮は、思春期以降、卵巣から分泌される女性ホルモン(主としてエストロゲン)の作用で発育します。卵巣機能に先天的な異常がありエストロゲンが分泌されない場合、子宮は発育せず、結果として月経も起きません。代表的な疾患として、性染色体がXOのターナー症候群(Turner's Syndrome)があります。その他にもやや頻度は低くなりますが、性染色体がXX(XX女性)およびXY(XY女性)でも、性腺形成不全症が生じます。いずれの場合も卵巣には卵子がなく、卵巣機能は低下、二次性徴の発達も遅れます。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035434 |