(心的)外傷後ストレス障害および外傷性精神障害〈精神科〉
【(しんてき)がいしょうごすとれすしょうがいおよびがいしょうせいせ】
PTSD(Post-Traumatic Stress Disorder)/Traumatic Mental Disorders
基本的には「トラウマ」と呼ばれる心の傷の後遺症で生じる精神障害です。この精神障害はベトナム戦争の帰還兵やレイプの犠牲者などが似たような心の後遺症を訴えることで注目されたもので、1980年につくられた新しいアメリカの精神科の診断基準であるDSM-III(「精神障害のための診断と統計のマニュアル」第3版)で初めて外傷後ストレス障害=PTSDの診断名が与えられました。その後、さらに心の傷の精神科的後遺症の研究が進むと、児童虐待のように1回こっきりではなく繰り返されるトラウマ的体験があると、PTSDとは別の様々な心の病が生じることがわかりました。パーソナリティ障害や解離性同一性障害(多重人格)、あるいは身体化障害という体の訴えとして表される心の病などがそれです。
最近は、これらの長期反復性のトラウマの後遺症を複雑性PTSDとか、外傷性精神障害と呼ぼうという考え方も強まっていますが、まだ正式に診断基準上は認められていません。なおトラウマとは心の傷という状態のことで、レイプや戦場という体験そのもののことではありません。
このような心の傷を生む出来事のことをDSM-IV-TR(「精神障害のための診断と統計のマニュアル」第4版、解説・改訂版)では、「外傷的出来事」(traumatic event)と呼んでいます。年間300万件の児童虐待が報告され、女性の9.2%が一生涯のうちにレイプ被害を受けるとされるアメリカでは、PTSDの生涯有病率は10%近いものと推定されていますが、日本でのデータははっきりしたものはありません。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035371 |