痔核・裂肛
【じかく・れっこう】
Haemorrhoids, Anal Fissure
直腸下部から肛門にかけては、血管が網目構造をしていてクッションのような構造になっています(静脈叢)。この構造で肛門を衝撃から守ったり、水様便が漏れないようになっているのです。このクッションが度重なる炎症で大きくなったり、クッションを筋肉と結合している組織が弱くなって、クッションが下にずれるようになると、痔核が発生します。肛門管は約3cmの長さでその真ん中あたりに歯状(しじょう)線という境界線があります。この線は胎生期に腸と皮膚がドッキングした名残です。歯状線より奥の腸側は痛みの神経がありませんが、歯状線より浅い皮膚側は痛みの神経が豊富です。歯状線より奥にできる痔核を内痔核と呼び、痛みはありません。歯状線より浅い所にできる痔核を外痔核と呼び、血マメ(血栓)を伴うと激しく痛みます。歯状線より浅い皮膚(肛門上皮)が何らかの原因(硬い便、炎症を起こして弱くなっている)で裂けると裂肛となり、痛みを伴います。
内痔核の罹患率は成人では86%(ハース、USA)または50%(小金沢、日本)という報告があり、非常に多い病気です。誰でも一度は排便時に痛みを経験したことがあるように、裂肛も内痔核に次ぐポピュラーな病気です。現在世界では、痔核や裂肛は生活習慣病と考えられています。ですから原因を除外する生活指導が治療の中心です。
原因は肛門管に炎症を起こすことと大きな圧を掛けることです。肛門管に炎症があると、静脈叢が肥大して痔核になったり、肛門上皮が弱くなり裂けやすくなります。また硬い便を息んで、圧を掛けると肛門上皮が裂けたり、静脈叢を支えている組織が壊されて痔核が垂れ下がってきます。
肛門管に炎症を起こす原因は次の7つといわれています。
[1]排便の異常(便秘&下痢または強く息むこと)
[2]肉体の疲れ
[3]ストレス
[4]体の冷え
[5]飲酒
[6]長時間の同じ姿勢(座りぱなし、立ちぱなし)
[7]妊娠と出産
また、最近、肛門括約筋の過緊張が肛門上皮の血流低下をもたらし、裂肛になるという説も提唱されています。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035113 |