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標準治療病名 > 消化器

食道裂孔ヘルニア
【しょくどうれっこうへるにあ】

Hiatus Hernia

食道裂孔ヘルニア

 「ヘルニア」(hernia)の意味は鼠径(そけい)ヘルニアの項でも説明していますが、その一部もしくは全部が本来あるべきところになく、逸脱している状態をいいます。食道は、頸部から始まり胸部(正確には後縦隔〈こうじゅうかく〉)を通り、腹腔(ふくくう)内に出たところで胃につながります。したがって、食道・胃接合部は腹腔内に位置するのが本来の姿です。その後縦隔から腹腔内への通じる孔(あな)を食道裂孔といいます。つまり食道裂孔ヘルニアとは食道裂孔より胃の一部あるいは全部が後縦隔内へ脱出した状態をいいます。胃の脱出の状況により次の3型に大別されます(図:食堂裂孔ヘルニア)。

[1]滑脱(かつだつ)型(sliding type)
 腹部食道、胃噴門(ふんもん)部、胃体上部が食道裂孔を通って後縦隔に脱出したもの。食道・胃接合部は横隔膜(おうかくまく)より上方に移行している。

[2]傍(ぼう)食道型(paraesophageal type)
 胃底部(いていぶ)のみが全周性に、食道裂孔から後縦隔へ脱出したもの。食道・胃接合部は腹腔内にとどまっています。

[3]混合型
 [1]と[2]の混合型。

 原因としては、先天性と後天性の場合がありますが、いずれも横隔食道靱帯(じんたい)、横隔膜食道裂孔右脚(うきゃく)などの胃噴門部固定機構(胃から食道への逆流を防止する役目を担っている)の異常によることが主です。
 ここでは、成人についてのみ述べることにします。成人に発生する大部分の成因は後天性であり、加齢による横隔食道靱帯の脆弱(ぜいじゃく)化、横隔膜下脂肪組織の退行変性、肥満、脊柱後彎(せきちゅうこうわん)などに加え、老人性肺気腫(きしゅ)、嘔吐など腹圧上昇の機転が加わることが誘因となって発生すると考えられます。




寺下医学事務所 (著:寺下 謙三)
「標準治療」
JLogosID : 5035099

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