感染性心内膜炎
【かんせんせいしんないまくえん】
Infective Endocarditis
心臓の中、とくに心臓弁およびその周囲組織に感染巣をつくる病気です。血液の中に細菌などが混入し(菌血症)、それが心臓内部組織に感染することにより起こります。多くの場合、心臓弁膜症や心臓の壁に穴があいている病気(心室中隔欠損症など)など心臓にもともと病気を持っている方がかかります。また、人工弁、心臓カテーテル、心臓ペースメーカー、中心静脈カテーテルなどの血液内の異物や、糖尿病、放射線療法、抗ガン剤、免疫抑制薬による息者側の感染防御能の低下も誘因となります。
病原菌としては緑色連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌などが多く、近年、グラム陰性菌(緑膿菌、腸球菌など)、真菌によるものも増加しつつあります。菌血症の誘因としては、歯科的処置が最も多く、その他、呼吸器、泌尿器科、産婦人科、外科処置によっても起こりますが、誘因がはっきりしないものが半数以上です。感染性心内膜炎の予防、診断、治療に関しては従来から米国心臓病学会のガイドラインがあり、2007年には日本循環器学会によるガイドラインが改訂されました。診断基準、抗菌剤の選択、手術適応、予防などに関しこのガイドラインに従った治療が標準治療といえます。頻度は少ない病気ですが、発症した場合、早期診断、早期治療が要求され、後手にまわると致命的となります。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035069 |