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標準治療病名 > 脳神経

脳膿瘍
【のうのうよう】

Brain Abscess

 脳膿瘍とは化膿性細菌によって脳実質内に膿(うみ)が貯留した状態をいいます。脳膿瘍の発生原因として中耳炎、乳突(にゅうとつ)炎、副鼻腔(ふくびくう)炎などの耳鼻咽喉感染が多く、肺化膿症、膿胸(のうきょう)などの呼吸器感染症や心内膜炎からの血行感染もあげられます。また先天性心奇形による感染や開放性の頭部外傷後の感染も原因として重要です。中耳炎が原因の場合、側頭葉や小脳に膿瘍を形成することが多く、副鼻腔炎が原因の場合は前頭葉に多くなります。病原菌は連鎖球菌・ブドウ球菌・肺炎球菌・緑膿菌など多様ですが、近年、嫌気性菌の頻度が増しており、新生児ではプロテウス・サイトロバクターが多くみられます。免疫能の低下した患者さんでは多菌性のこともよくあり、さらに真菌・結核菌も認められます。
 臨床検査所見は一般的な感染症同様に白血球の増加などの炎症反応が認められ、髄液検査でも特異的なものはなく、細胞数の増加やタンパク増加が認められます。病理組織学的に膿瘍はその形成過程から3期に分けることができます。まず初期には限局性脳炎の時期で病原菌による脳実質の炎症が起こり、第2期に明らかに化膿性の炎症を呈し脳組織の壊死(えし)・融解部を取り囲む膿性被膜が認められるようになりますが、周囲組織との境界はいまだ不明瞭です。3期には明らかな被膜が形成され、限局性の膿瘍が完成します。中心部に膿の貯留した部位を囲む被膜は、新生血管と線維芽細胞多数含む肉芽組織からなり、さらにその周囲は脳浮腫(ふしゅ)がみられます。限局性脳炎期から膿瘍形成に至るまでには10~20日を要します。




寺下医学事務所 (著:寺下 謙三)
「標準治療」
JLogosID : 5035041

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