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3.藪
【やぶ】

東京-五つ星の蕎麦蕎麦の蘊蓄 > そば屋の系譜

江戸そばを代表する暖簾である。やぶと呼ばれるそば屋は、江戸中期には出現している。

周辺に竹藪が多いことから、つけられた俗称であるそうだ。まず一七〇〇年代、雑司ヶ谷「藪の内」の「爺が蕎麦」に始まり、寛政のころには各所に「藪」がみられ、深川の藪は評判だったそうだ

現在の「藪」系のそば屋は、天保四年(一八三三)に駒込団子坂の「蔦屋」として、営業の記録がある。

この店が神田連雀町に支店を出したが、明治十三年(一八八〇)、砂場系のそば屋、堀田七兵衛に店を譲った。それが「かんだやぶそば」の始まりであり、当初は「連雀町藪蕎麦」と名乗ったが、昭和八年(一九三三)、町名変更にともない、現在の店名に変えた。

七兵衛の子勝三が大正二年(一九一三)に「並木藪蕎麦」(台東区雷門)を、勝三の子鶴雄が昭和二十九年(一九五四)に「池の端藪蕎麦」(文京区湯島)を出した。この直系三店のほか、明治二十五年(一八九二)創業の「上野藪そば」(台東区上野)同三十七年(一九〇四)創業の「浜町藪蕎麦」があり、これらは職人に暖簾分けされた店だ。

初代七兵衛の兄弟と子供たちは、全員、そば屋になっている。

現在の藪一門は、暖簾分けされた店から、さらに暖簾分けされるという形で数が増えてきた。

また「薮伊豆総本店」(日本橋)のように、江戸末期から続く「伊豆本」というそば屋を七兵衛が買い取ったため「藪(薮)」の字がついたという店もある。いまは堀田家を離れているものの、一門の一翼を担う老舗となっている。

「藪蕎麦」一門は、大正の半ばから「藪睦会」という暖簾会をつくっている。団子坂で名声を博した、江戸に始まる蔦屋が廃業して百年近くなるが、その蔦屋の流れを受けた「かんだやぶそば」の暖簾が、睦会として纏められたのである

しかし、睦会に繋がらなくとも、いまや藪の名は、日本全国、そば屋代名詞の如く使われている。

藪そばの特徴は、基本的には、そばが田舎そばほど黒くもなし、更科ほど白くもない。ただし、蔦屋のころから、淡い緑色をもたせようと心がけていた節がある。夏場の粉の色を良くし、食欲を進ませようとの発想で、かんだやぶそばでは、クロレラが加えられているそうだ。つゆは、大体、きりりと辛い。

卓上に運ばれるそばの景色は、どの店でも、単純ですっきりしている。


東京書籍
「東京-五つ星の蕎麦」
JLogosID : 14820744


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ISBN: 978-4-487-80147-3