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土左衛門
雑学大全2

水死体のことを「土左衛門」というが、これは誰だろうか。実は、本名や生年など詳しいことはわかっていないが、江戸時代に実在した成瀬川土左衛門という力士の四股名なのである。仙台藩出身の幕内力士で、色白で青白さが目立ち、体型もぶよぶよした水ぶくれのような感じだったことから、いつの間にか、水死体のようだという評判が立った。そこから逆に、水死体を土左衛門というようになったのが語源だという。江戸時代には、現在と違って水難事故の犠牲者が多く、川を流れてくる土左衛門の姿を、普通の人々が見る機会も多かったようだ。山東京伝の『近世奇跡考』という著作のなかにも「水死して渾身ふくれふとりたるを、土左衛門の如しと戯れしが、ついに方言となりしと云。八百屋お七の狂言に、土左衛門伝吉と云あるも、成瀬川が名をかり用たるものとぞ」などの記載があり、水死体が土左衛門といわれるようになったいきさつと、狂言にも使われるほどこの言葉が浸透していることが記されている(『大相撲奇才人物烈伝』小池謙一、東京堂出版による)。また、川柳でも、「船遊び 土左衛門が来て しんとする」などと、水死体を見ることが珍しくなかったことをうかがわせる句がある。この土左衛門という言葉、俗語のまま終わったのではなく、現在はきちんと広辞苑に載っている。世の中の力士で広辞苑にまで名前が載っているのは名誉なことだとは思うが、詳しい経歴や戦歴は不明で、しかも相撲にはまったく関係のない「水死体」という意味の言葉になった本人は、さてどんな気持ちであろうか。

  

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