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貞操帯
雑学大全2

「春の女神」ともいわれ、昆虫愛好家たちから熱狂的な支持を受けているギフチョウ(岐阜蝶)。その美しい模様はもちろんのこと、山麓部のごく限られた場所に棲み、幼虫の間はアオイなど日本古来の植物を食べ、春先のごく短期間しか出現しないなど、「深窓の令嬢」さながらの生態は、そう呼ばせるにふさわしいといえる。さらに、成虫になったギフチョウのメスの交尾は生涯にただ一度だというから驚きだ。もっとも、ギフチョウのメス自体がそう望んでいるわけではない。交尾の際に、オスがたんぱく質の分泌物を出してメスの腹端に付着させる。それが固まると袋状の付属物となって、次からの交尾が不可能になるのだ。したがって、交尾は生涯にただ一度ということになるのである。オスが自分自身の遺伝子を残すために、進化の過程でそのようなしくみを獲得したと思われるが、これではまるで自分の妻をほかの男に取られないように貞操帯をさせる嫉妬深い夫というしかない。メスが生涯で一回しか交尾できないのに対して、オスは何度でも交尾が可能だ。たまに不完全で小さな貞操帯を見ることがあるが、これは交尾を重ねたオスの分泌物の量が不足した結果らしい。『レッドデータブック』によると、ギフチョウは「絶滅の危険性が増大している危急種」に、日本にいるもう一種であるヒメギフチョウは「存続基盤が脆弱な希少種」に挙げられている。開発が進み、彼らの棲息地域が侵されていることが原因だが、メスが一回しか交尾できないことももう一つの原因だろう。

  

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