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固定相場制
雑学大全

円は一ドル三六〇円である、とはっきり決まっていた時代があった。今はもう定年を迎えたり、そろそろリタイヤの時期を迎える予定のおじさんたちが、世界中から「エコノミックアニマル」などと呼ばれながらも必死で働いていた日本の高度成長時代のことである。
円が一ドル三六〇円と決まったのは一九四九(昭和二四)年のことである。
その当時の日本経済は大混乱を極めていた。戦前は一ドル四円二六銭と決まっていたが、敗戦とインフレで円の値打ちが急落し、しかも輸出と輸入では円の値段がマチマチ。同じ輸出や輸入であっても、物によってはレートが違うという無茶苦茶ぶりで、利権屋の跳梁次第でどうにでもなる状態だったのだ。
これではマズイということで、日本経済再建のために来日していたアメリカのドッジ特使が、為替レートの一本化を行って決定したのが一ドル三六〇円だったわけである。
では、この金額の基準はどこにあったのか?
一本化すると決心したものの、ドッジ特使を中心としたスタッフは大いに困り果てた。日米間での取り決めがなかなかまとまらず、レートをいくらにするかがちっとも決まらないのである。
そんな中、ドッジ特使に随行していた一人の人物が、
「円とは何だ? 円とは丸ではないか。丸い円は三六〇度だから、一ドルも三六〇円にしよう」
と提案したのである。
なんとも適当で、いい加減で、やけくそ気味の提案ではあるが、なんとこれがあっさりと受け入れられ、一ドルは三六〇円と決まってしまったのである。
以来、一九七〇(昭和四五)年に日本が変動相場制に移行するまでの二〇年以上もの間、一ドルは三六〇円ということで、日本経済を取り仕切ってきた。その決定理由がここまでアバウトだったとは、戦後間もない頃の日本がいかにアメリカになめられていたかがわかろうというものだ。

  

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