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金かくし
雑学大全2

和式便器の前を覆っている部分を「金かくし」と呼ぶ。これは武士がつける鎧の前腰の部分の草摺の通称でもあり、ちょうど男性器を隠すように下がっているところから通称されるようになったものだ。その通称が、ちょうど男性が大の用を足そうとしゃがんだとき、便器前の遮蔽部分が草摺と同じような役割になるため、便器にも流用されるようになった。これが「金かくし」の由来だといわれることがある。確かに隠してくれるのは「金」だが、本来は「衣」と書いて「きぬかくし」といっていたのがなまったものだ。このときの「衣」とは、平安朝の貴族女性が身につけていた十二単をさし、「きぬかくし」は彼女たちが用を足すときに使われていた小道具に由来しているのである。内裏に仕える高貴な女性たちなどは、樋殿という用足しに使う場所で、清筥あるいは虎子と呼ばれた専用の箱を便器として使っていた。便器とはいえ、漆塗りで金銀や螺鈿の細工の施されたもので、おつきの女官がうやうやしく捧げ持って運んだ。女官たちは樋殿で用足しの世話をしたが、いちばん大事なのは、重ね着している十二単の処理である。板張りの樋殿には畳が一枚だけ敷かれ、その中央に便器である清筥を置く。さらに、その後ろにT字型の板を差し込む。この板に、清筥にまたがった女性の十二単の裾をひっかけるのが、女官たちの役割だ。あれだけの重ね着は、自分一人では扱いきれないため、数人がかりでめくり上げたり広げたり、板に架けたりという作業が必要になるのだった。こうしてT字型の差し込み板は、広げ架けた衣によって用を足す下半身の姿を隠すことから「衣かくし」と呼ばれるようになり、後世になって便器の前に取り付けられるようになっても名前だけが残されたわけである。

  

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