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活版印刷
雑学大全2

文字を考案したのが人類の文明のはじまりともいえる。その文字を連ねた文章を、いちどきに大量に生み出す装置である活版印刷の発明は、文明の発展に大きく貢献した。だから活版印刷機の生みの親であるグーテンベルクは、近代文明の父といっていい存在だ。確かに活版印刷の装置が、いつ頃誰によって発明されたかについては諸説ある。一四二三年頃のオランダでコステルによるとする説、イタリアやボヘミアなどでも考案されていたとする説もある。しかし、書物という形にして世に出し、知識の広範な普及や情報の伝達に役立ったという観点からいえば、間違いなくグーテンベルクである。彼の考案した活版印刷機による『四二行聖書』の出版は一四五五年のことで、これが一般に『グーテンベルク聖書』と呼ばれているものだ。彼は一三九七年前後にマインツで生まれ、一四二八年頃にシュトラスブルク(ストラスブール)に移って、貴金属職人の仕事に携わりながら活版印刷の研究をはじめていたという。一四四〇年代半ばにはマインツに戻っていたようで、一四四五年の日付がついた本が出版されていたり、活版印刷によるカレンダーが姿を見せていることから、すでに発明の成果は出ていたと見られている。ただグーテンベルクは、金融業者のフストに借金をして共同出資の形で印刷業をはじめていたが、商売として成り立つほどではなかったらしい。出資金をめぐって裁判になり、彼は敗れ印刷機も工場もフストのものになってしまった。名高い『四二行聖書』が出版され、技術力のほかに美術性や芸術性で高い評価を得たのは、その後のことである。『グーテンベルク聖書』とはいうものの、現実に印刷・出版されたのはフストの手によってであった。

  

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