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キツネの嫁入り
雑学大全2

日が射しているのに小雨が降っている天気雨のことを、俗に「キツネの嫁入り」ということがある。その気象の不思議さを、キツネにばかされていることにたとえているのだろう。キツネが嫁入りを人間に見せないために雨を降らせているとか、キツネの嫁の流す涙であるともいわれる。地域によっては、托鉢をかぶって井戸をのぞいたり、袖をかぶるとキツネの嫁入りが見えるという言い伝えがあるところもあるが、人間が嫁入りを見てしまうと不幸になる、災いが起こるなどとされることも多く、黒澤明のオムニバス映画『夢』の第一話「日照り雨」はまさに、母のいいつけを破ってキツネの嫁入りを見た少年が、そのためにおそろしい目に遭うという物語である。文化人類学者の小馬徹氏はこれについて、「伝統的な習俗を色濃く残す社会では、不安定で非日常的な天気雨を直接的に表現することをタブーとしたからではないか」と考察している。ちなみに東アフリカ地域では天気雨のことを「ハイエナが今結婚している」「ハイエナが出産している」(ケニア)、「キツネが出産する」(エチオピア)などと表現する。韓国や中国でも「トラが嫁取りに行く」といわれるなど、世界各国に同じような言い回しがあるのだ。四季の変化に富み、農業で暮らしを立てていた日本人は、自然現象の微妙な変化にも敏感で、とくに稲の生育にとって欠かせない「雨」に対しては独特な感覚を抱いていたと思われる。桜ながし、卯の花くだし、五月雨、氷雨など季節ごとに雨をあらわす特有の言葉があり、「雨ふって地固まる」「雨後の竹の子」など雨を使ったことわざや「猫が顔を洗うと雨」「月に傘がかかると雨」など天気を予報するような言い伝えが数多くあることを考えても、日本人がいかに雨に親しんでいたかがよくわかるだろう。

  

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