クォーツ時計
現在、時計の主流といえば、クォーツ時計だ。クォーツの刻む時間は、スマホやカーナビなど、情報機器に不可欠となっている。
もっとも歴史のある時計は日時計だろう。
太陽が南中(なんちゅう)するときを正午とし、1日の時を刻んだ。
雨や曇りでは使えないが、近世まで、もっとも正確な時計であった。
時計の針が右回りなのは、日時計の影が右回りであることに由来するといわれている。
17世紀には、オランダのホイヘンスが画期的な時計を発明する。
振り子時計である。
ガリレイが発見した振り子の等時性(とうじせい)、つまり振り子が規則正しく往復するという特性を応用したもので、誤差は10秒/日ほどである。
この振り子の動きをゼンマイで実現したものが機械式時計だ。
これで、誤差は数秒/日になった。
そして20世紀、クォーツ時計の発明により、誤差は一気に0・5秒以下/日にまで縮まった。
クォーツ時計の「クォーツ」とは、水晶(すいしょう)のことである。
水晶には不思議な性質がある。
力を加えると電圧が発生し(圧電効果またはピエゾ効果という)、逆に電圧を加えると固有のリズムで振動する(逆圧電効果という)のだ。
これは1880年、フランスのキュリー兄弟によって発見された(弟ピエール・キュリーの妻はキュリー夫人)。
クォーツ時計は、この水晶の性質を利用する。
水晶の細さい片へんに交流電圧を加えると、逆圧電効果によって特定のリズム(1秒間に約3万回)で振動する。
この固有の動き(固有振動)を電気信号に変え、時計の刻みに利用するのだ。
水晶の固有振動から電気信号を取り出す素子を水晶振動子と呼ぶ。
これは現代において「産業の米」とも呼ばれ、電子機器に不可欠なものである。
時計に限らず、コンピューターや動作検知センサーの重要な部品となっている。
例えば、携帯電話には10個余りの水晶振動子が組み込まれているのだ。
時計に話を戻そう。
現代では、クォーツ時計よりもさらに正確に時を刻む時計も利用されている。
セシウム原子時計である。
その誤差は3000万年で1秒以下という驚異的なもので、日本の標準時を刻む電波時計にも利用されている。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術vol.2」 JLogosID : 8567133 |