エアコン
暖房時、エアコンは消費電力以上の熱を放出する。冷房時は消費電力以上の冷房効果を発揮する。どうしてだろう。
普段、何気なく利用しているエアコンだが、よくよく考えると不思議がいっぱいである。
電熱器がないのにどうして暖房ができるのだろう。
また、カタログには1キロワットの電気代で5キロワットの冷暖房ができるなどと書かれている。
消費電力よりも冷暖房の能力のほうが大きいのだ。
この秘密を解くために、まずエアコンが部屋を冷やすしくみを見てみたい。
この原理はいたって簡単。
水を肌に塗り、フッと息を吹きかけると清涼(せいりょう)感が得られるのと同様である。
水が液体から気体に変化するときに気化熱を奪い、周囲の温度を下げるという原理を用いているのだ。
エアコンでこの水の働きをするものを冷媒(れいばい)という。
では、実際に冷やすしくみを見てみよう。
エアコンは圧縮器(すなわちポンプ)と二つの熱交換器からできている。
一方を凝縮(ぎょうしゅく)器、他を蒸発(じょうはつ)器というが、しくみは同一である。
冷房の際、室内機の中の「蒸発器」で冷媒は蒸発して気化熱を奪い室内を冷やす。
気体となった冷媒はポンプの力で「凝縮器」に運ばれ、室内で奪った熱を放出して液体になる。
この繰り返しが「冷房」である。
注目すべきは、ポンプは室内の熱を室外に運ぶだけ、ということだ。
運ぶだけなら大きな電力は不要である。
こうして、消費電力以上に、部屋の空気は冷やされることになる。
次は暖房のしくみを考えてみよう。
先ほどの冷房時のエアコンを逆に回してみる。
すると、冷房時とは逆に、ポンプは室外の熱を室内に運ぶことになる。
これが暖房のしくみである。
電熱器など不要なのだ。
冷房時と同様、熱を運ぶだけなので、消費電力以上に暖房効果が得られることになる。
以上のように、ポンプは冷媒を介(かい)して室内から室外へ、また室外から室内へ熱を運ぶ役割をする。
これは水槽の水をポンプで循環(じゅんかん)させるのに似ている。
そこで、このしくみをヒートポンプと呼ぶ。
このヒートポンプのおかげで、エアコンはたいへん効率のいい省エネ空調機になったのである。
【執筆・監修】
中経出版 「雑学科学読本 身のまわりのモノの技術」 JLogosID : 8567051 |