内閣不信任決議
【ないかくふしんにんけつぎ】
(概要)衆議院が
内閣への不信任を突きつける決議。日本国憲法は第69条で「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と定めており、可決された場合は、政局が大きく流動化する。小沢一郎氏率いる新党「国民の生活が第一」や共産、社民など7つの中小野党の党首が2012年8月3日、参院での消費増税法案成立阻止を目指し、内閣不信任決議案提出で合意。自民も独自に不信任案提出の動きを模索しており、政局が緊迫の度合いを増している(12年8月6日現在)。
(解説)不信任案が可決されたケースは、1953年の吉田内閣の「バカヤロー解散」など4度あるが、中でも93年の宮沢内閣の不信任決議は、直後の解散・総選挙で敗れた自民党が野党に初めて転落。非自民・非共産の8党連立による細川政権が誕生し、戦後政治史の一大転機となった。最近では2011年6月に菅内閣に対する不信任案が提出されたが、窮地に立たされた菅首相(当時)が採決直前の党代議士会で、「震災対応に一定の目途がついたら退陣する」と前代未聞の表明をして党内造反を辛うじて抑え込み、結果的に否決された。
このように不信任決議は政治情勢に大きな影響を与えるため、決議案提出だけでも一定のハードルがある。1人の提出者と賛同者を50人以上必要とし、また否決された場合は、「一事不再議」の慣習により、同一会期中に同じ議案を二度は審議されなくなるため、主に決議案を提出する野党にとっては勝負所の“切り札”として位置づけられる。また「一事不再議」の原則により、仮に複数の政党・会派から不信任案が提出された場合は、より議席数の多いグループの案に一本化される。先に決議案提出で合意した7野党の会派は70人足らずで、120人の自民党会派が提出した場合は、自民案が採決されることになりそうだ。
しかし12年8月6日時点で衆院勢力では、不信任決議案可決には、全野党と無所属議員に加え、民主党から15人以上の造反が必要。また、自民・公明は消費増税法案に賛成した立場から「反増税」でまとまる中小7野党と一線を画したい構えで、終盤国会は「一体改革関連法案の採決による党分裂を避けたい民主党執行部、法案成立と引き換えの衆院解散を求める自公、増税阻止を狙う他の野党という三つどもえの構図」(12年8月3日産経新聞)という不透明感が漂う。
なお、同じ国会による内閣への“ダメだし”でも参議院の「問責決議」に法的拘束力はない。しかし問責決議も可決された場合、参院での審議は全面的に止まってしまい、現在のように政権与党が参院で過半数を持たない「ねじれ国会」では、消費増税法案の成立見通しが立たなくなる。
JLogos編集部
| Ea,Inc. (著:JLogos編集部) 「JLogos」 JLogosID : 12664574 |