【東京五つ星の鰻と天麩羅】鰻の名店厳選40軒 > 台東区
初小川
【はつおがわ】
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母に抱かれたみたいな居心地
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戦後すぐに建てられた木造2階建ての古さびた店は、店内中央の丸柱といわず壁といわず千社札がべたべた。古い大福帳やお地蔵さん、弓張提灯など雑多な小物が場所を問わず飾られていて、半世紀ほども時が逆戻りしたかのようだ。古民家風の内装にふさわしく、冬は中央のテーブルに囲炉裏も切られる。
毎朝仕入れるうなぎは、明治40年(1907)の創業時からつぎ足して使っている辛口のたれに浸けては、今でも七輪の炭火で1枚ずつていねいに焼く。別注のきも吸いは丼にたっぷり入っていて、これが何と50円。「父の代のとき、俳優の小沢昭一さんに『何か売りものをつくったら』といわれて思いついたんだそうです」と、割烹着姿で店を切り盛りする3代目当主の河合一恵さん。この値段、昭和50年代から変わっていない。
席はテーブルに6、入口近くの小上がりに2、奥の小上がりに6と、合わせて14。小ぢんまりと温かく、どこか懐かしい雰囲気に、ついつい長居してしまいそうな店だ。
![]() | 東京書籍 (著:見田盛夫/選) 「東京五つ星の鰻と天麩羅」 JLogosID : 14070725 |