香水④
【東京雑学研究会編】
§香水への道を開いたアラブ人の発見
日本の香のように、植物を燃やした煙でいぶして衣類に香りをこもらせるといった、香水のかわりのような方法はあった。また湯船に生花を浮かべて、入浴後の肌にその香りが残るようにするという方法も、世界各地の女性が試みていた。
しかし、花の香り成分だけを抽出して、しかもそれを消えないようにする方法はないものか。この女性たちの願望が香水づくりをスタートさせることになった。そして、それに応えたのが、アラブの錬金術師たちだった。
錬金術師というと、金をなんとかして人工的に作り出せないかという、今から見れば眉ツバものの研究に励んでいた者たちという印象があるが、大真面目で金製造を試みる過程で、さまざまな新発見や新技術の開発があったことも確かなのである。
その一つが、花の香り成分を取り出す水蒸気蒸留法の発明であり、もう一つはアルコール製造技術の発見である。
蒸留法は、ペルシア人のアウィケンナによって一一世紀はじめに発見されたといわれ、彼は世界初の花の精油抽出成功者とされている。
同じ頃、アラブ人たちの間では、アルコールを抽出する方法が考案されていた。ほとんどの香料は水には溶けないが、アルコール液中では溶ける性質を持つ。そしてアルコールの保存性は香りが消えるのを防ぎ、揮発するアルコールは、そのとき同時に溶け出している香りを立たせる。まさに香水の原型のようなものを作ることに成功したのだ。
この技術が、多くの香料と一緒に、十字軍の遠征でヨーロッパに伝わる。フランスの植物学者フランギパニは、この技術をさらに研究して、今のような香水製法を完成させた。彼は、香料をアルコールに浸して熱し、香料の香りをアルコールに移すことに成功したのである。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670319 |