ハツカネズミ
【東京雑学研究会編】
§ハツカネズミは、オスの匂いで流産する?
ハツカネズミのメスは、その名のとおりわずか一九~二〇日間の妊娠で出産する。しかも、一年に一〇回近くも出産し、そのたびに五~六匹の子どもを産むという、旺盛な繁殖力を持っている。
だが、意外な理由で、あっけなく流産することもある。これは、発見者の名前をとって「ブルース効果」と呼ばれている。
まず、ハツカネズミを交配させると、大体のメスは妊娠し、その時点で発情は消える。
つまり、交配する状態ではなくなるのである。ところが、交配した相手のオスではなく、別の新しいオスと一緒の檻に入れると、メスは流産し、また周期的な発情を見せるのである。
これを人間にたとえていうと、妊娠した後で、夫以外の男性のそばにいるだけで、自然に流産してしまい、その男性を受け入れる準備ができるということである。
次の実験では、新しいオスとの間を金網で仕切ってみたのだが、やはりメスは流産した。つまり、新しいオスと接触があるかどうかは、関係がないことがわかった。また、流産するのは、妊娠初期の六日目までで、それを過ぎると流産はしなくなる。
ところが、嗅覚を失ったメスは、新しいオスのそばにいても、流産しないのである。どうやら、オスの匂いがメスに働きかけて流産させているようだ。
そこで、妊娠したメスに、交配する前に匂いを嗅いだことのあるオスの匂いをまた嗅がせても、流産する率は少なかった。つまり、なじみのオスだと、あまり異性を感じないのである。
また、交配中に匂いを嗅いだことのあるオスの匂いだと、流産はしなかった。これは、交配の相手、つまりお腹の子の父親だと勘違いしたためだと思われる。
ハツカネズミのメスは、妊娠中であっても、新顔のオスの匂いをかぐと、それまでのことをころりと忘れて、また交配する気になってしまうのだ。
| 東京書籍 (著:東京雑学研究会) 「雑学大全」 JLogosID : 12670169 |