キンドル
【きんどる】
【概要】
米国のインターネット通販の最大手、アマゾン・ドット・コム社製の電子書籍端末。携帯電話の高速通信回線などを通じ、書籍や雑誌、新聞などのコンテンツを受信する。書籍の表示は、モノクロの電子ペーパー「E Ink」を使用。バックライトを使っておらず、「目が疲れづらい」という評判もある。第1号機種は2007年11月に米国で発売。当初は電子書籍専用端末だったが、音楽、映像もダウンロードできるタブレット型端末やスマートフォン向けのアプリなどに多様化した。日本での発売は、出版社と価格決定権などを巡る交渉が難航して遅れていたが、12年11月19日、「キンドル・ペーパーホワイト」が日本市場に出荷された。年内にはタブレット型端末も投入される。
【解説】
電子書籍端末の「本命」とされるキンドルがついに日本に上陸した。米国では、2007年以前の出版市場では電子書籍の存在感が無かったが、キンドルの発売後は3G回線の普及も相まって市場が急拡大。12年1~3月期の電子書籍の売り上げは、紙の書籍のハードカバーを抜き、ペーパーバックに肉迫。キンドルのコンテンツも100万を超えるまでの規模を擁する。日本でも10年、米アップル社の初代「iPad」発売で「電子書籍元年」と騒がれ、ソニーの「リーダー」や楽天の「コボ」など参入が相次いでいる。
しかし、日本の電子書籍市場の成長は米に比べ、伸び悩んでいるのが実情だ。矢野経済研究所の「電子書籍市場に関する調査結果」では、11年度の市場規模は723億円。10年度から約50億の伸びにとどまり、この間、「ガラパゴス」を投入したシャープは市場から撤退した。同研究所は、キンドル参入を機に市場が伸び、15年度は1500億円との予想を立てているが、「キンドル上陸によって、これまで続いてきた日本の『電子書籍ガラパゴス』が、そう簡単に変わるだろうか」(ジャーナリスト・山田順氏、12年11月14日東洋経済オンライン)といった懐疑的な見方もある。
伸び悩みの要因は、(1)コンテンツの不足(2)紙の書籍と比べ割安感を欠く――などが指摘される。その背景には、日米の出版市場の商習慣の違いがある。米国では、アマゾンのような小売り側が作家や出版社に交渉して作品を直接買い付け、価格決定権も握って3~4割安く販売している。一方、日本では、「事実上、出版社が作家を囲い込み、印刷会社、取次会社を経て販売される」(12年11月18日・産経新聞)仕組みだ。アマゾンは約2年をかけ、日本の出版社と交渉してきたが、紙の書籍の収益低下を怖れる出版社側が価格決定権を譲らず難航した。初出のコンテンツの数は5万点程度で、今夏に進出したインドの約120万点を大幅に下回った。発売直前には、ヤマダ電機など家電量販大手3社がキンドル取扱いを見送る動きが明らかになり(12年11月17日・日本経済新聞)、リアル店舗のネット通販への警戒感も浮き彫りになった。
| 時事用語のABC (著:時事用語ABC編集部) 「時事用語のABC」 JLogosID : 14425435 |