魚鱗癬
【ぎょりんせん】
Ichthyosis
魚のうろこのようなカサカサ(鱗屑〈りんせつ〉)がつく症状をいいます。尋常(じんじょう)性魚鱗癬(ichthyosis vulgaris)と伴性(はんせい)遺伝性魚鱗癬(x-linked ichthyosis)が代表的な病気です。いずれも遺伝性があり、尋常性魚鱗癬は優性遺伝で性差(男女差)はありませんが、一方の伴性遺伝性魚鱗癬はX染色体により伝えられる伴性遺伝性で男性がほとんどです。
皮膚の表面は角質層という表皮細胞が死んでつくられる層で覆われていますが、この角質層は皮膚のバリア機能に重要な役割を果たしています。この角質層は垢(あか)になって自然に剥げ落ちてはつくられる一定のサイクルがありますが、その際、皮膚には古い角質層がするりと落ちる巧みなメカニズムが備わっています。ところが、魚鱗癬においては、その機能がおかしくなって角質層がうまく落ちてくれないために異常な角質層、すなわち鱗屑がみられるようになります。
尋常性魚鱗癬では、フィラグリンという角質層の水分保持に関係するタンパクをつくる遺伝子に変異があり、皮膚の乾燥と角質層の脱落障害を生じます。伴性遺伝性魚鱗癬では、コレステロール硫酸から硫酸基をはずしてコレステロールにするステロイドスルファターゼという酵素をつくる遺伝子に変異があるため、コレステロールに比べてくっつきやすいコレステロール硫酸がたまって角質層が落ちにくくなります。
これらの病気とは別に、魚鱗癬を部分的な症状として、神経を中心とする様々な臓器に異常を生じる遺伝的な病気があり、それらを魚鱗癬症候群といいます。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035309 |