早期前立腺ガン
【そうきぜんりつせんがん】
Early Prostatic Cancer
人間ドックで、血液検査で前立腺抗原(PSA)が調べられるようになり、無症状で見つかる前立腺ガンが増えています。PSAというのは、前立腺の細胞の中だけでつくられているタンパクのことです。免疫反応を起こすものを抗原、その抗原を処理するために体の中でつくられたものを抗体といいます。いろいろな病気を起こすウイルスは抗原、その病原菌をやっつけるために体の中でつくられるのが抗体です。抗体は本来自分の体にないものが入ってきた時、それを攻撃するためにつくられます。そして、抗体は抗原とちょうど鍵と鍵穴のようにぴったりと結合します。
人間の前立腺をすりつぶしたものをウサギに注射すると、人間のタンパク質はウサギにとって異物ですから、それに対する抗体をつくります。前立腺はいろいろなタンパクからできているので、前立腺をすりつぶしたものを注射されたウサギも多数の抗体をつくります。この中には、前立腺だけでなく、肝臓や皮膚にあるタンパクに対する抗体もあります。そして、前立腺だけに結びつく抗体を探しあてると、この抗体が結合する相手は前立腺の中だけにしかないタンパクということになります。このタンパクのことを、PSAと呼ぶわけです。したがって、PSAの血液検査というのは、患者さんの血液の中に、この抗体と結びつく物質がどれくらい含まれているかを調べるわけです。検査に使う抗体の種類によって正常値は異なりますが、血液1mL中にPSAが0.00001mg以上含まれていると前立腺ガンが疑われることになります。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035154 |