急性腎炎症候群
【きゅうせいじんえんしょうこうぐん】
Acute Nephritic Syndrome
急性腎炎症候群は、腎障害によって、血尿、腎糸球体濾過(ろか)量の低下、浮腫(ふしゅ:むくみ)、高血圧などの臨床所見が急に出現してくる疾患群をまとめていうものです。多くは急性糸球体腎炎という腎臓そのものの病気が原因です。腎臓そのものの病気で急性腎炎症候群を起こしてくるものとして、慢性腎炎の原因疾患でもあるIgA(免疫グロブリンA)腎症、膜性増殖性腎炎などが急性腎炎の経過を示すことあります。その他、全身疾患の一症状として、急性腎炎が起こることがあるのが、全身性エリテマトーデスによるループス腎炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病による紫斑病性腎炎などです。
その中でもやはり、急性糸球体腎炎が大切なので、ここでは急性糸球体腎炎について記載することにします。急性糸球体腎炎は、成人にもみられますが、学童期の小児に多い病気です。慢性化せず完全に治まる場合が多いのですが、それでもほとんど慢性化することのない小児に比べると、成人の場合は約3割近くが慢性化するとされるので、適切な治療と、十分な療養が必要になります。腎臓の糸球体に炎症が起こるきっかけとしては次のように考えられています。A群β溶血連鎖球菌(いわゆる溶連〈ようれん〉菌)やウイルスなどの抗原が体内に入ると、免疫反応によって作られる抗体が抗原と結びつき、免疫複合体と呼ばれる物質ができます。それが血液中を流れて糸球体に沈着することによって、炎症がはじまるとされています。
| 寺下医学事務所 (著:寺下 謙三) 「標準治療」 JLogosID : 5035134 |